ゲームな日記

君にやっと巡り逢えた
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ニルバーナの目次的なあれそれ



 自分でも資料として振り返ることが多いので、ついでにページを作っておきます・w・
 何ページめどんな話だっけ?がだいたい分かればよし!w



登場人物紹介
 物語後半で一度更新しておりますが、ネタバレ的なものはない…ハズ


1ページめ
 物語の始まり。舞台はアンダワルド港
 街の空気に馴染めないままでいる主人公モレンドと、相棒であるスカイハマーゲイルのメロディ

2ページめ
 アクアドラゴンが街を強襲したジドレイの戦から一年
 様々なものを失った、あの戦は何が原因だったのかと考えるモレンドだったが…

3ページめ
 よく晴れたその日、パトロール隊がアクアドラゴンに強襲されるという事件が起きる 

4ページめ
 アーティシアから派遣されてきた部隊の隊長であるウェンダ・シングリラとの出会い
 
5ページめ
 アクアドラゴン視点。彼らの現状とは…

6ページめ
 ナロールの巣に調査隊が派遣されることになり、モレンドも兵士の一人としてメロディと共にアンダワルドを発つ

7ページめ
 よぎるのは、かつての世界の面影。在りし日の幸福な一人と一匹の姿。その顛末
 ナロールの末裔は吠えた。友に、最期の言葉を

8ページめ
 隊長であるウェンダの裏切りにより、モレンドは危機に陥る
 一度目の窮地は父に救われた。そして二度目の窮地で、彼はバモーカクに出逢う

9ページめ
 友の魂の慟哭に駆けつけたバモーカクは、自我を喪い暴れ狂うナロールタリティーに、ある決断をする
 友の最期の望みを叶える…。それが友のためだと信じて

10ページめ
 ナロールタリティーの攻撃で負傷したモレンドだが、バモーカクの癒やしの力で復活を果たす。しかし…

11ページめ
 彼の生が幸福で満ちるその日まで、彼女は歌い続けると決めた

12ページめ
 聖地アノヤーテン。魂の安寧が約束された黄金郷にも変化の兆しが迫っていた

13ページめ
 彼は旅立つ。傍らに大きなドラゴンを伴って 


 
 番外編的なあれそれな話。本編未登場の子も含む

メロディの憂鬱
 メロディがモレンドを気にかける理由とは…

黒き花と呼ばれた竜の話
 本編未登場。登場予定ではあるクロユリの話



あとがき的なページ
 「甘ったるいニルバーナ」のあとがき的なもの
 ついでにテーマソングとかものっけてます。大きなネタバレ的なものは書いてないハズ…



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【 2015/08/18 (Tue) 】 甘ったるいニルバーナ | TB(-) | CM(0)

「甘ったるいニルバーナ」あとがき的なページ


 というわけで、突然ですが「甘ったるいニルバーナ」はここでおしまいです!
 なぜなら!これが序章だからです…(›´ω`‹ )
 序章ってことは一章とか二章とか続くんじゃろ??って言われそうだけどそれはまぁとりあえず置いておくとして
 ニルバーナどうでしたでしょうか。面白かったかな?ぐすっとくる部分あったかな?書いてる俺としては狙ってやってるとこもあるので、ニルバーナのどこかしらで何かしら思ってもらえるとこれ幸いです


 Twitterの方でひっそり発信していましたが、イメージソングというかテーマソングというかをこっそり決めてつぶやいたりしてたので、こっちにものっけておきます(›´ω`‹ )
 まず序章にあたる「甘ったるいニルバーナ」の全体的なイメージソングは『季節は次々死んでいく/amazarashi
 歌詞がもうね…こう色々ぴったりすぎて。もうね。ぜひ歌詞サイトとかで歌詞見ながら聴いて、聴きながら読んでほしいかな
 次、主人公モレンドのイメージソングは『Brave Shine/Aimer』かなーと。まぁ色々似合うなぁと思うのはあるんですがね。『立てなくなっても 運命(さだめ)は進む』って部分で決定した
 次ーメロディー。彼女には『アレルヤ/kalafina』がいいかなーと。これも結構悩んだけど…メロディが祈ってる感じがするなーと思って
 次~バモーカク。出番はこれからって感じだけどイメージソング決めちゃったぜ。FF零式HDで使われてる『UTAKATA ~泡沫~』がよいかなと。これもまぁ歌詞を見てもらえると…前世含めたあれこれって感じかなー
 ゆーちゅーぶかニコ動辺りに曲落ちてると思うので、ニルバーナの世界をより知りたいって方がいたら聴いてみてもらえると嬉しいです(›´ω`‹ )


 せっついてくれるフレがいたり、更新楽しみにしてくれてるフレがいたり…なんだかんだで序章だけで13ページの量になってしまいましたが、おかげさまでモレンドの旅が始まりそうですよ
 読了の方はご存知のとおり、明るい旅ではないけれど…。番外編も読んでくれてる方はご想像のとおり、この先もやっぱり明るい話ではないけれど。今後も応援してくださるとこれ幸いです(›´ω`‹ )
 つまり!感想応援ちょろっとでもくださると嬉しいですということです!←
 そしたら次の章の更新も頑張れる…かもしれない(›´ω`‹ )


【 2015/06/30 (Tue) 】 甘ったるいニルバーナ | TB(-) | CM(2)

「甘ったるいニルバーナ」13ページめ



 かけがえのないものを二つ、続けて失った。
 一つは父親。サークス人という生まれ持ってしまった血筋に負い目を感じつつも、母さんと出逢い、惹かれ、俺よりもずっと苦労を重ねて生きてきたあの人は、最期に俺を遺すことを選んだ。母さんと歩いてきた道を外れるようなことはしなかった。『サークス人』の道に戻ることなく、俺をその道に引きずり込むこともなく、身体の欠片も残さないで、逝ってしまった。
 もう一つはドラゴン。アンダワルドに移住してからやたらと俺に構ってきた、体格の小さなスカイハマーゲイル。
 笛を吹くと機嫌がよくなってカチカチとメロディを口ずさむところから、勝手に名前をつけて『メロディ』と呼ぶようになった。
 大事なものを、二つ、続けて失くしてしまった。
 もう二度と同じものは得られない。どんなに探しても、どんなに望んでも、見つかることはないだろう。
 俺の世界を構成していた大部分がほぼ同時に抜け落ちて、大地と空に大きな穴が空いた。
 その空洞と、空洞の向こうに広がる仄暗い暗闇。意識するだけで不安で胸が潰されるくらいに苦しくなるこの感じ。母さんのときももちろんあったけど、そのときは父さんがいたし。メロディもいたし。不安になっても、俺の世界にはまだ大事なものが残っていたから。残った大事なものを大切にしようって思って……思ったのに、これか。
 空にも地面にも大きな穴が空いてしまった。ビュウビュウと風の吹き抜ける音もする。
 穴の向こう側に待っているものはなんだろう。暗闇からやってくるものはなんだろう。
 じりじりと穴の淵から何かが這い出してきているような気もする。
 このままだと俺の世界はバランスを崩して崩落するんじゃないだろうか。あの暗闇に侵食されて。果物がゆっくり腐るみたいに内側からかたちをなくしていく。
(…生きないと……)
 父さんに、救ってもらった命だ。父さんと母さんが、サークス人とオーセラ人が、血に縛られないで、認め合って、愛し合った、その証明が俺なんだ。
 生きなければ。何がなんでも。
 行かなければ。
 そう思いはしても、俺の世界に空いた穴は埋まらず、相変わらずビュウビュウと風の吹き抜ける音だけがする。地面から空へ、吹き抜ける風がとても冷たい。まるで冬の風だな。体温が奪われていく。肌が冷たい。
 せめてどちらか片方だけでも埋められたらいいのに…。半分諦めながらそんなことを思った。
 こんな穴ぼこの世界を抱えながら歩いて行くなんて、無理かもしれない。

『諦めて、何処へ行く』

 …声。無感情で、起伏がなくて、まるで機械みたいなのに、生きている声がした。冷たく無関心な声色そのもののくせに、こんなところまでやってくる。
 顔を上げると穴の淵に大きなドラゴンがいた。声音から想像できるのとおりの顔でこっちを見ている。

『穴が片方、塞がれば、お前はまだ歩くのか』

 そういえばさっきそんなことを思った気もする。せめて片方だけでも埋められたら…。そうしたらうるさい風の音はマシになるし。地面がしっかりしてくれるなら、空に穴があって不安になっても、たぶん大丈夫だ。たぶん、だけど。
 バモーカクと呼ばれるドラゴンが穴の淵から、穴の中へ、仄暗い暗闇の中へ、躊躇うことなくするりとした動きで滑り込んだ。止める暇も確認する暇もなかった。バモーカクは俺の世界に空いた穴を埋めるために地面の一部になった。
 耳を切り裂くようだった風の音がマシになって、凍えるように冷たかった肌が感覚を取り戻す。
 ………歩け、ってか。
 分かってるよ。言われるまでもない。
 お前がそこまでするんなら。そこまでしてくれるんなら…歩く以外、道なんてないな。



 目を開けて見えたものは、どうしようもなくいつもどおりの日常の風景だった。すっかり見飽きた自分の部屋の天井だ。
 視線をずらして窓の外を見ても、空に穴なんて空いてない。当たり前か。現実はこっちだ。
 のそっとした動きでベッドから起き上がって、視界の端でぴよんと跳ねている髪を引っぱった。また酷い寝癖がついてる。ちょっと昼寝したつもりだったのに。
 寝癖のついた髪を引っぱりつつ部屋の中を見渡す。
 俺にしてはきれいに片付けた方だろう。机の上には何もないし、タンスの中もできるだけ片付けたし、ベッドの下のいらないものとか放置してたものとか整理したし。荷物は昨日のうちにまとめたし。うん。まぁ上出来だ。
 部屋の入り口には背負って歩ける大きさにまとめたリュックが一つ。隣にはいつもの杖が立てかけてある。
 今日、俺はアンダワルドを出て行く。正しくは追い出される…って形になるのかもしれないけど。
 どこまでもついて回るサークス人とオーセラ人のハーフという血筋が、俺をここに留まることをよしとしなかった。それが街の総意だった。
 アーティシアから応援の兵が派遣されることが決まり、俺はその兵の到着を待って、ここを出て行く。代わりにばーちゃんが住み続けることに許可はもらった。ばーちゃんはちゃんとオーセラ人だし、ちょっと頑固だけど普通の人だってことは街の人も知っているし。
 ばーちゃんは納得なんてしてないけど、俺っていう不信の種が街にい続けることは、もう限界だ。オーセラ人で隊長だったウェンダの裏切り、多くの兵の死亡、ナロールの巣の崩壊に伴う浜辺の環境の変化。受け入れたくない現実が続いている。少しの危険の可能性でもできる限り排除したい…これ以上何もいらない…。その気持ちは分からなくはない。だから出て行くことを決めたんだ。それでアンダワルドの平穏が保たれるなら、それでいい。
 俺が俺である限り、行く場所なんてないも同じだ。
 それでも。
「…ふー」
 一つ深呼吸してリュックを背負った。武器である杖はリュックの肩紐に取りつける感じ。歩くと柄が足に当たってちょっと邪魔だけど、まぁしょうがない。
 お腹は減ってないし、食べたい気分でもない。時間より少し早いけど、もう出ようか。
 も一つ深呼吸してから部屋の扉をそっと開けてみる。広いとはいえないリビングダイニング。四人がけのテーブルにぽつんと一人ばーちゃんが座っている。その細くて小さな背中にぐっと唇を噛んだ。
 最後まで、俺が出て行かなければならない現実に声を上げてくれていた。…嬉しかった。ありがたかった。
 でも、行かなくちゃ。
「じゃあ、行くよ」
 声をかけたけど、ばーちゃんはこっちを振り返りもしない。「手紙、送るよ。元気だよって。たぶんあんまり留まらずに移動してるから、返事をくれても届かないと思う。だから、返事はいらないから」…やっぱり何も言ってくれない。まぁそうだろうなと思ってた。
 うんともすんとも言わないばーちゃんに肩を竦めてから玄関に向かう。
 もう帰ってこないだろう我が家。十年近く住み続けた家。
 昨日片付けをしながら色々見て回ったから、もう大丈夫。
 懐かしいけど、名残惜しいけど、これでさよならだ。
 ドアノブに手をかけて引き開けようとしたところで「モレンドっ!」とぴしゃっとしたいつもの声で呼ばれた。反射で背筋が伸びる。
 え、と振り返った先でばーちゃんがぶん投げた何かが見えて、顔面を狙った何かをなんとかキャッチする。なんだこれ、と手を下ろして掴んだものを確認すると、包みだった。遅れて分かるいいにおい。
「まずは道なりにアーティシアを目指すんだろう? それなりに距離があるんだ、弁当くらい持っていきな」
「…ばーちゃん」
 くしゃくしゃな顔で笑ったばーちゃんを久しぶりに見た。
 俺が寝てる間、自分の心と食い違う現実にどう葛藤して、何を思いながら、孫に持たせる弁当を作ったのか。苦い思いをいくつ呑み込んで今そうして笑っているのか。
 目頭が熱くなりかけて、それを誤魔化すためにぐっと強く目を閉じた。次に目を開けたときには俺も笑っている。「助かる」そう言って、いつもみたいに、笑う。
 永遠の別れじゃない。会えるさ。俺がちゃんと生きていて、ばーちゃんがちゃんと生きていて、世界や周囲の状況がもう少し落ち着いたそのときには、きっと。


 どこか遠巻きに俺のことを見ている、そんな視線を背中に感じつつ、いつもの砂利道を歩いてアンダワルドの門前に行くと、バモーカクが俺のことを待っていた。


門前


 どうしてあいつが俺についてくるのか、俺のことを待っているのか。俺のことを助けてくれるのか。結局一つも訊けないままあいつと旅立つかたちになってしまった。
 俺を待っているバモーカクの前に改めて立ってみて、デカいなぁ、と思った。なんていうか…うん。メロディは小さかったしな。
 記念すべき旅立ち…というわけにはいかなかったけど、アンダワルドを後にする今、まず初めに何を言うべきかと迷った。迷ったけど、当り障りのない言葉しか出てこなかった。
「改めてよろしく。バモーカク」
『ああ』
 やっぱり無感情な声と瞳がじっとこっちを見下ろしている。
 と思ったら、俺が背負っているリュックを一瞥して『荷物か。私の背中に乗せればいい』とか言い出すから、案外気遣いのできる奴なのかな? とも思ったり。
 ありがたい申し出だったので、それなりに重いリュックはバモーカクの背中へ移動させた。
 軽くなった背中に杖を背負い直して、住み慣れたアンダワルドの街に背中を向ける。
 とりあえずアーティシアを目指そう。ウェンダを追うにしても、情報収集だってしなくちゃならない。
 アンダワルドでこれだけのことが起こったんだから、ラーダスの各地でも混乱が起きてると見ていいだろうし。うん、冷静にいこう。大丈夫。一人じゃない。間違っても俺は一人じゃない。


門にて


「じゃ、行こうか」
 よく言えば旅立ち。悪く言えば追い出される街を背に、道を見据えて、一歩目を踏み出す。
(大丈夫。地面の穴は塞がった。空の穴も、そのうち塞がる)


【 2015/06/27 (Sat) 】 甘ったるいニルバーナ | TB(-) | CM(0)

「甘ったるいニルバーナ」12ページめ



 肉体と魂を分離させる。それはたとえるなら、壁にのりづけされたポスターを剥がすような、繊細な作業だ。集中力はもちろんのこと、力を入れすぎれば紙は破れてしまう。それでもあの手この手を使ってポスターをなるべくきれいに剥がすのが僕の仕事の一つなので、文句はない。ただ少し面倒くさいなぁと思うだけだ。
 メロディと呼ばれたドラゴンの肉体と魂を分離させるのも、僕の仕事の一つ。
 今回はとくに丁寧に、その魂を構成する一欠片も取りこぼさないよう、いつもよりずっと丁寧な仕事を心がけた。おかげで満足いく出来になった。メロディは生前と何一つ変わらない姿と思考で、ただ肉体だけを失くして、一人の人間を守護するドラゴンに変わった。
 対象のドラゴンの肉体と魂を分離させる仕事のついでに、メロディにはおまけをしておいた。まぁ、いろいろと。それは僕が個人的、いや、個竜的に? することであって、僕の少しの勝手であるから、まぁ問題ない。

『オーティス』

 問題はない…と、思ったんだけどなぁ。
 声のした方に顔を向けると、大きな竜が一体、僕のことを見ていた。全身真っ黒なクレルーヴォだ。いつもより眉間に皺が寄っているところを見るに、彼は僕のしたことを良しと思っていないらしい。まったく、おかたいことだ。もっと柔軟にならなくては、この先僕らとて危ういというのに。
 真っ黒なクレルーヴォの隣には対照的に真っ白なウェルヴァイスがいて、彼はクレルーヴォとは違って不思議そうに首を捻っていた。クレルーヴォのように頭がかたくないだけ、ウェルヴァイスはまだ話のしようがある。

『何故力を貸すのだ』
「なぜ…気に入ったから」
『何故気に入ったのだ』
「うーん…彼女がドラゴンらしくなかったから、かな?」

 首を捻った僕に、ウェルヴァイスはさらに首を捻ってみせる。『ドラゴンらしくないところが気に入った、と?』「うん、まぁ。そんな感じ」『…お前は変わり者だな』「そうかなぁ」『聖地で擬態しているのはお前くらいのものだろう』「ああ…」そう言われてしまうとそのとおりだ。何も言い返せない。
 かざした両手は五本指で、爪は丸くて攻撃力はない。背も小さくて、身体を守る鱗もなくて、炎も吐けない。
 ドラゴンと比べてしまえば、人間は無力に等しい。爪で攻撃することはできないし、皮膚はやわらかくて剥き出しで、牙なんてもちろんないし、炎だって吐けない。二足歩行の移動速度は決して早いとは言えないし、視力がズバ抜けていいというわけでもないし、他の種族を超越するような抜きん出た特徴というのもない。
 そのかわり、人には可能性があると僕は思っている。
 たとえば、職業。生まれ持った才というのは多少あるだろうけど、人は自分の道を自分の意志で選んで歩いていける。剣を取るか、盾を取るか、杖を握るか、弓を手にするか…。戦う以外にも生きていく道はあるし、それを選ぶことができる。そのために努力することもできる。可能性は無限大。僕は人のそういうところがすごく好きだ。
 だから、僕は人間の姿をとっている。
 僕は、ドラゴンという枠に囚われない僕になりたい。なれるものならば。そしてきっとそれは、なろうと思って努力しなければなれないものなのだ。
 アノヤーテンを治めるギガドラゴンの末裔、オーティス。そのことに満足していては、僕はそこで終わってしまうだろう。
 聖地はいいところだ。黄金色の空に、黄金色の大地。黄昏の中に浮かぶ神殿は夕焼け色を受けて金色に輝き、すべてが目覚めと憂いの時間の中で止まっている。争いごとといえるような何かは存在せず、召還された魂は安堵の黄昏に包まれ、安らかに眠る。


光3


 聖地はいいところだ。それは僕がよく知っている。
 でも、それで満足していてはいけないのだろうとも思っている。
 今まで保たれてきた安寧も、安らぎも、きっともうすぐ終わってしまう。そう予感しているのは僕だけではないだろう。口にはしないけれど、クレルーヴォやウェルヴァイス、他のドラゴン達も思っているはずだ。
 ドラゴンの肉体と魂を分離させるさい、僕らはその魂に深く触れることになる。その思考や想いもまた然り。だからわかるのだ。感じるのだ。そのドラゴンが見てきたものを、思ったことを、自分が体験したもののように。
 だから誰もが思っている。
 この安寧は、もうすぐ終わることを。
 アノヤーテンの夕陽が沈む日は近い。きっと僕らの世代で見ることになるだろう。
 その日に備えて…僕も、旅立たなくてはならない。
(メロディ。君は勇気ある選択をした。僕らも見習わなくては)
 自分の安寧など捨てて、生きている者を護ることを選んだ、君の選択は尊いものだ。たとえそれが限定された誰かのためであったとしても。
 世界は常に生者へと譲られるべきで、死者が蔓延っていてはいけないのだ。死者が生者を喰らってはいけない。それは本来の生き物の在り方から外れる、世界が破綻する道だ。
(だから、クロノス。君も、もう眠るべきなんだよ)
 いまだ、終わらぬ憎悪に囚われている君が撒いたすべてが、今、世界を呑み込もうとしている。
 慧眼イサイアと呼ばれた彼でもできなかったことを誰かが成し遂げなければ。そうでなければオラディアは。
(誰か…。誰か、か。人任せだな、僕も)
 かざした掌に丸い水晶が浮かぶ。金色の光を透かす水晶の中には、息絶えたフライドラゴンと、魂だけになったメロディ、そして、人知れず彼女の守護を纏った人の姿が映っている。
 彼には可能性があるだろう。狭間にいる彼だからこそ、どちらにもなれない者だからこそ、見える、届く、何かがある。

「モレンド」

 確か、そういう名前だったっけ。
 水晶が黄昏の空気の中にとけて消える。
 吹く風は心地よく、ほどよい静寂はすっかり肌に馴染んだ。
 それでも、僕は、行かなくてはならない。
 それが世界のため。そして、僕のためだ。
 すっと息を吸い込む。きっともう二度と戻ってはこないだろう聖地の空気で胸をいっぱいにする。そして、僕の言葉を予感しているだろう仲間に、別れを告げるため、僕は口を開いた。




【 2015/06/08 (Mon) 】 甘ったるいニルバーナ | TB(-) | CM(0)

「甘ったるいニルバーナ」 ~番外編・黒き花と呼ばれた竜の話~



「クロユリ…」
 低い呻き声に顔だけ向けると、下半身をどろどろの肉塊に溶かされたヒトだったものが、半分死んだ顔でこっちを見ていた。
 血のにおいが鼻を麻痺させている。他にも色々な薬品臭さで嗅覚が馬鹿になりつつある。
 もうすぐ死ぬであろうヒトは、それでも、死んでやるものかという目でぼくを睨んでいる。もう溶け始めた手で武器なんだろう杖を手にしようとする、その姿に、ぼくは後ずさった。
 攻撃がこわいというよりも、どんどん肉塊へと溶けていく身体で、まだ生きようとする意志というやつがこわかった。
 後ずさった後ろ足で何かを踏んづけた。やわらかいもの。見ない方がいい、と思うのに、視線は自分が踏んだものを…もとは生き物だった、今は何かの肉塊に成り下がったものを、見ている。
(俺がやる。お前は休んでろ)
 すっかり恐怖で竦んでしまったぼくの頭の中でそう声がした。いつもぼくを助けてくれるお兄ちゃんの声だ。
 ぼくが辛いとき、悲しいとき、苦しいとき、お兄ちゃんは颯爽と現れて、ぼくがやりたくないことを代わりにしてくれる。とてもいいお兄ちゃん。
(うん)
 ぼくはお兄ちゃんの存在に安心して返事をして、目を閉じた。眠るように。すべての現実を閉ざすように。
 お兄ちゃんが終わったぜとぼくに声をかけてくれるときは本当にすべてが終わっている。
 目を開ければもうどこにも何もない。ぼくらを実験道具として扱っていたヒトたちのいた小屋、そこにあった器具や薬品は炎で燃やし尽くされ、そこにいたヒトも、原型を留めない状態で燃えている。お兄ちゃんがすべて片付けてくれたのだ。ぼくらを苦しめてきたヒトも、薬も、全部壊してくれたのだ。
 これでぼくは、ぼくらは、自由だ。
 小さく力がなかった頃なら、ぼくはまだこの場所に縛られいいように使われていたかもしれない。でも、ぼくはお兄ちゃんを得た。お兄ちゃんはぼくの味方をしてくれる。ぼくが苦しいと思う場所にいるべきじゃないと言ってくれた。そのために計画を立ててくれた。力を貸してくれた。
 ぼくは呪いの呪縛から逃れるのだ。
 ぼくは、自由になる。
「ぐろゆり……」
 早々にこんな場所は立ち去ろうと翼を広げたときだった。朱色に燃え盛る炎の中から声がした。ぼくを、ぼくらを呼ぶ声が。
 クロユリ。そう呼ばれることに慣れてしまったことが悲しい。そう呼ばれて自分のことだと思ってしまうことが悲しい。
 憎しみの土に咲いて、芽吹く、花。
(お前はそんなんじゃない。気にするな)
 お兄ちゃんの声にほっとしてうんと返し、ぼくは今度こそ飛び立った。
 舞い上がった空は、青かった。風が気持ちよかった。
 もう首輪はない。手枷も足枷もない。
 ご飯は自分で調達できる。寝床だって自分で見つけてみせる。どうしても困ったらお兄ちゃんが力を貸してくれる。
 ぼくは、自由だ。

✙  ✙  ✙  ✙  ✙


 母と呼ぶべき人がぼくをイクジホウキしたのがすべての始まりだった、と、今となっては思う。
 ぼくがこうなってしまったのは、母が原因だった、と責めたいわけじゃない。
 ぼくをこの世に誕生させた母に親としての責任があることは確かだ。でもぼくは、そのことを責めたいわけではない。
 母がぼくを卵の段階でホウキしたのには何か、深い理由があったのかもしれないし。きっとそうだと思っていれば、ぼくは顔も知らない母を怨まずにすむし。怨みに突き動かされて、顔も知らない母を探して、殺すことも、しなくていい。
 ぼくは母に棄てられた。卵の、自分ではまだ何もできない段階で。
 運が悪ければ、ぼくは外殻を割られて食べられていたことだろう。
 ……いや。今となっては、そちらの方がずっと、よかったのかもしれない。
 そうすれば、ぼくは、こんなぼくにならずにすんだ。
 俗にいうサークスジンというヒトたちに拾われてしまったぼくは、卵の段階から様々な実験をされた。具体的なことはわからない。でも、ろくでもないことだった、というのは確かなことだろう。
 卵の段階から身体をいじられていたから、ぼくは魔法の使えるドラゴンとして孵化した。
 その頃は、周りを取り囲むサークスジンのヒトたちは、ぼくにとっては親だった。ご飯をくれて、寝床をくれて、ぼくの面倒を見てくれる、イイヒトたちだった。

 狩りだと教えられてヒトを襲うことを疑問に思わなかった。
 栄養があるぞと言われてヒトを食べることを疑問に思わなかった。
 お前の健康のためだと注射を打たれること、苦い薬を飲むことを受け入れた。
 悪いヤツらだと言われて、敵だ、殺せ、と言われた相手を殺すことに疑問を抱かなかった。

 何かがおかしいなと気がついたのは、ぼくとそっくり同じような外見のドラゴンと『敵』として相対したときのことだ。
 そのドラゴンとぼくは戦った。お互い戦うことに疑問はなかった。
 ぼくは相手が敵であることに何も思うことはなかったけど、向こうはぼくが敵であることに疑問を抱いたらしい。
 戦っているのに、問いかけられた。ぼくの得意の腐蝕の魔術を器用に避けながら、そのドラゴンはぼくにたくさん問いかけた。
 なぜそこにいるのか。なぜ牙を向くのか。なぜ戦うのか。何のために戦うのか。自分がしていることの意味を理解しているのか。世界の現状を理解しているのか。
 お前はどうしようもなく間違っていて、世界を滅びに導く歯車の一つとなっている。なぜ気づかない。
 そのドラゴンは最期にそうこぼしながら肉塊に成り下がった。
 彼の言っていたことは難しくて、よくわからなかったけど、最期の言葉だけは鎖骨の辺りに食い込んでぼくの胸を痛くさせた。
 その日からぼくは変わった。ぼくの面倒を見てくれるイイヒトたちのことをよく見るようになった。
 このヒトたちがどういうヒトたちかなんて今まで考えたこともないほどにぼくは生き人形になっていたのだ、ということにそのとき初めて気がついた。ぼくの思考は眠っていたのだ。単純なことしか考えられないように、はいかいいえしかわからない子供みたいに、ずっと、生きていたのだ。
 それはぼくの意志だったのだろうか。
 ぼくがそうやって自覚して生きるようになってから、ぼくに優しかったそのヒトたちは、次第にぼくの変化に気付き、ぼくに厳しくなっていった。
 ぼくがヒトを殺したくないと渋れば鞭で打ってきたし、食事を抜きにされることもあったし、痛い注射や苦い薬を嫌がると魔法で束縛されて無理矢理摂取させられることも増えた。

 そんな日々が辛くて、悲しくて、苦しくて、嫌だった。

 クロユリ、とぼくを叱咤する声が飛んでくる。殺しなさい、と命令する声が。
 目の前にはヒトの子供。兄弟のようで、ガタガタ震えてくっついて、ぼくを見上げている。
(殺したくない)
 抗ったところで、薬漬けにされてしまったぼくは、やりたくないこともやってしまう。爪を振り上げてしまう。その爪で子供の一人の背中を引き裂いてしまう。倒れた子供は悲鳴もこぼさない。悲鳴を上げたのは隣の子供。倒れた子供を必死に揺さぶる、その子供に、ぼくはまた爪を振り上げる。
(いやだ。殺したくない)
 肉どころか骨まで抉るようなゴリッとした感触に自分の爪を溶かしてしまいたくなった。
 子供が二人、ぼくの爪の一撃で死んでしまった。死体となった子供を引きずって連れて行く、もうどう呼んだらいいのかわからないヒトたち。これで実験素材が手に入ったとか、なんとか、言っている。
 ぼくはそのヒトたちの後ろをついていく。その背中を爪で引き裂くことはしたくてもできない。身体がぼくのいうことを聞いてくれないのだ。
 ぼくの身体なのに。ぼくの意思なのに。
 ぼくはたくさん苦しんだ。抵抗した。抵抗すればするほど痛い現実が待っていた。それでもこうしなければならないとぼくは気付いてしまった。ぼくの思考はもう眠っていない。ぼくはもう何もできない子供じゃない。このヒトたちのしていることは、間違っている。今ならそう言える。
 でも、やっぱり、苦しいのは、辛い。悲しい。寂しい。ここにぼくの意思を思ってくれる誰かはいない。応援してくれる誰かはいない。自力でこの環境から逃れなくてはならない。果たしてそんなことがぼくにできるだろうか? やらなければならないことは、わかっているけれど。


✙  ✙  ✙  ✙  ✙



(力を貸してやるよ。弟よ)
 …ある日、自分の中からそんな声が聞こえた。そう、突然、ぽっと湧いた。ぼくの中に。
 最初は戸惑った。これもまたぼくを縛り続けるあのヒトたちが新しくかけた術なのでは、と思った。
 でも、すぐに違うとわかった。なぜなら、この声の持ち主は、ぼくの味方をしてくれたのだ。ぼくを苦しめ続けるあのヒトたちから逃げ出したいと言ったら賛成してくれた。そして手伝うとまで言ってくれた。
(あなたはだぁれ?)
(俺か? 俺はお前の兄ちゃんみたいなものだ)
(お兄ちゃん?)
(ああ)
(だから、助けてくれるの?)
(ああ)
(でも、ぼくの中にいるのは、どうして?)
(…事情があるんだよ。気にするな。
 俺はお前の味方だから、お前のしたいことをする。あいつらが邪魔なら俺が殺そう。そうして自由になればいい)
(そんなことできるの?)
(できるさ。兄ちゃんを信用しろ)
 お兄ちゃんは、ぼくに優しかった。ぼくを縛るヒトたちの生活の規則性や隙を見つけ、ぼくを縛る術、投与される薬など、ぼくに関わるすべてのことを把握した。そして、ぼくがここから抜け出すための計画を立ててくれた。
 目を閉じると暗闇で、ぼくはドラゴンと向かい合っている。水面を覗き込んだようにそっくり同じ見た目のドラゴンと。それがぼくの中にいるお兄ちゃんだ。
(いいか? 上手くやるんだ。薬が効いていて、命令をなんでもこなすドラゴンのフリをするんだ)
(うん)
(まずはそうして檻から出る。そしてすぐ魔法を使え。範囲はこの小屋全体だ。それなりの規模になって疲れるだろうが、頑張るんだ)
(うん)
(辛かったら俺が代わる。できるところまでやってみろ。これはお前の闘いだ。俺はその力になる)
(…うん)
 ぼくは力強く頷いた。何度もお兄ちゃんから脱出計画の手順を聞いて、頑張って憶えた。
 全身全霊、全力で魔法をかけなければいけない。しかも超スピードで。そこだけが心配だったけど、やるしかない。

 お前はどうしようもなく間違っていて、世界を滅びに導く歯車の一つとなっている。なぜ気づかない。

 あの言葉がまだ鎖骨辺りに引っかかっている。 
 ぼくにそっくりだったあのドラゴン。肉塊へ溶けていったあのドラゴンは、ぼくの遠い親戚だったりしたんだろうか。
 ぼくが自分の間違いに気付き、あの場所から脱したことを、あのドラゴンは喜ぶだろうか。
 自由になって、翼で風を掴めるようになって、しばらく。ぼくはその事実に気付いて途方に暮れた。
 行きたい場所も、やるべきことも、何も思い当たらなかった。逃げるという願いが叶って、そこから先が真っ白だった。これで日々はもう苦しくないだろう。苦い薬も痛い注射も鞭もない。僕は魚でもお肉でも、好きなものを食べればいい。自然の中で生きて、そうすることが当たり前のドラゴンとして、生きて……。
 そんな自分を想像してみたけれど、難しかった。
 ぼくはこれまで命令をこなす生き方をしてきた。そばには誰かがいた。その誰かはよくないヒトたちだったけど、生き方に迷うことはなかった。そのヒトたちが間違っていると気付いてからは抗ったし、それまでは無条件に信じてその道を歩いていた。
 何をしてもいいというのは、自由すぎて、ぼくには大きすぎる。
 途方に暮れて空の中で浮遊するぼくに、お兄ちゃんの声が言う。
(それでいいんだよ。悩むんだ。後悔しない生き方を選ぼう。お前の生はお前が謳歌すべきなのだから)
(おうか? ってなに?)
(あー…楽しむ、みたいな意味だ)
(たのしむ…生きることを?)
(ああ)
 それはとても難しいなぁ、とぼんやり思いながら、ぼくは空の中に浮遊していた。
 山の向こうに沈み始めたおひさまが真っ赤に燃えている。
 もうすぐ夜が来る。ずっと飛んでいるわけにはいかないから、休める場所を探さなくてはならない。
 これからは何もかもが手探りの日々が始まるのだ。ぼくと、お兄ちゃんの。
 その未来は少しだけこわくて、少しだけわくわくして、それ以上に、不安だった。
 クロユリ。赤い血を吸った憎しみの土に芽吹く、黒い花の名前。それがずっとぼくの心臓に食い込んでいる。お前はそこから逃れることはできない、といっている。
 きっと、休む場所を捜して飛び回っているうちに、サークスジンの集団と遭遇してしまったことは、ぼくの運命だったのだろう。
 彼らに改造されたドラゴンとして、ぼくは、彼らに制裁を与えるべきだと思った。もちろん逃げるという選択肢もあった。けど、彼らが世界を破滅へ導く歯車の集まりだというのなら、殺した方が、世界のためになる。
(戦うのか?)
 静かなお兄ちゃんの声がぼくにそう問いかける。
 すっかり夜になった空の中に浮遊する真っ黒なぼくは、闇に溶け込んでいたに違いない。眼下のサークスジンたちはぼくに気付かないでいる。
(うん。ぼくは、あのヒトたちがいない方が、世界のためになると思う。ぼくやお兄ちゃんみたいなドラゴンが増えることは、嬉しいことじゃないし)
(…そうだな)
(たのしく生きることも、してみたいけど。ぼくはクロユリ…これまで奪ってきたよい命の分、せめて、悪い命を狩っていくよ)
 ひんやりとした夜の空気を吸い込む。なんとなく目頭がツンとした気がしたけど、気のせいだ。だってぼくは、悲しくはない。ただ…少し、サビシイだけだ。


 クロユリ。
 ぼくはその名前から逃れることはできないだろう。簡単に逃れられるほど、ぼくのしてきたことは軽くはない。
 だから、せめて、ぼくは、戦おう。
 クロユリ。その名にふさわしく、憎しみの土の上で立つ者になろう。
 この世の悪のすべてを、ぼくの腐蝕の魔術で肉塊へと変える、その日まで。


【 2015/06/03 (Wed) 】 甘ったるいニルバーナ | TB(-) | CM(2)
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