ゲームな日記

君にやっと巡り逢えた
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「落日のイデア」3ページめ




 アライナスの巣というのは『巣』と呼ぶだけあって入り口は洞窟みたいな形状になっていた。少し、ナロールの巣に似ているかもしれない。
 ずっと洞窟だと戦闘に突入した場合戦いにくいなと思ったけど、杞憂で終わった。薄暗い岩のトンネルを少し進めば道は開けて、眩しい光が視界を射した。
 まず感じたことは、空気越しに肌をチクチクと刺すような確かな敵意の存在だった。感覚としては冬の空気にも似ているかもしれない。まだ肌寒い季節でもないのになんとなく腕をさすってしまう。
 この辺りを荒らしていただろう灰色のドラゴンを一掃したとはいえ、俺達はこの場所には場違いな存在であることに変わりはない。バモを畏れて近づいてはこないけど、俺一人だった場合、確実に襲われていただろう。
 こういう場合、ボスは一番奥にいるってパターンが決まっている。ナロールの巣のときもそうだったし…。
 絶対に歓迎されていない、敵意に満ちた空気の中を進むのは気が引けるけど、頑張るしかない。
 だいたいの物事なら無表情に傍観しているバモが、この場所ではぐるりと首を巡らせて周囲に睨みを利かせている。
『…私の背に乗った方が安全だろう』
 もそっとした声に、ここは素直に頷いた。争いに来たわけじゃないし、エレナタリティーに会えればそれでいい。安全第一で考えるなら、バモの背中に乗って最奥を目指すのが賢いだろう。
 バモの提案に甘えて背中に乗せてもらい、飛んでもらった。歩けばそれなりの道のりもドラゴンの背で運んでもらえばすぐのことで、俺達はものの数分でエレナタリティーのもとに辿り着いた。


 アライナスの巣2


 エレナタリティーは、バモを5倍にしたくらいは大きかった。見た目はまんまバモって感じで、この辺りのドラゴンがバモを畏れていた理由がなんとなく分かった。二匹はよく似ているのだ。よく似ているけど、やっぱり違う。威圧感というか…ああ、だから、体格が大きなドラゴンはそれだけで畏れられるのか。今になってバモに頭を下げていたフライドラゴンの気持ちが少し分かった。
 俺達が来ることを事前に察知していたのか、エレナタリティーは凪いだ視線でこちらを一瞥して、首を傾げた。そういう仕種はバモと似ている。
『…まず礼を言おう。外の異物を排除したそうだな』
 え、と驚く俺に対し、バモは無表情のまま『異物か。確かにアレは異物だ。一体どこから来ている』当然みたいな顔で会話をするので、本当に初対面なのか? と思いつつも俺は口を挟まないことにした。なんていうか、口を挟んじゃいけない空気みたいなものを感じるというか…。高位のドラゴン同士が話していた方がいいだろう、っていうか。
 よし。バモに会話の進行を任せてみよう。口を挟むのも気が引ける。

『ジューノ水晶回廊…。そこから異変が広がっていると聞いている』
『ラーダス各地に異変が起こっている、と見ていいわけか』
『さよう。水晶回廊に近い場所ほど大きな異変に見舞われているようだ。ガイシスタリティーも、活動が活発化したジャイアントを警戒している』
『気が立っているのはどこも同じ…ということだな』
『そういうことになろう』

 一拍置いて、エレナタリティーの視線がバモから俺にスライドされた。なんとなく背筋が伸びる。
『……ナロールタリティーの顛末については聞き及んでいる。同胞が世話をかけたようだな』
「え? あ、いや…」
 ナロールタリティー。ウェンダが何かしなければ、エレナタリティーのように聡明で、話し合いもできたドラゴン。
 あのまま放っておけば、アンダワルドに侵攻したろうナロールタリティーを止めるしかなかったとはいえ…思い出すだけで口の中が苦い。かけがえのないドラゴンが死に、ナロールの巣は崩壊し、浜辺の生態系は崩れ、父さんも、メロディも…。
 強く握っていた拳を意識して解く。「俺は何も…。バモの力添えがあったからこそ、というか。むしろ申し訳ないというか……」ぼそぼそ口にする俺にエレナタリティーは首を捻った。『何を謝ることがある』「いや…ウェンダって人間が、ナロールタリティーを暴走させたし…。今もラーダスを危機に晒してるのは、たぶん、人間の方だから」だから、同じ人間としては頭が上がらないというか。申し訳ないというか。
 バモが眉間に皺を刻んだかと思ったら翼で俺の背中をぶん殴ってきた。おかげで久しぶりに顔面からすっ転ぶことになって痛いのなんの。草原があるとはいえ顔から地面に突っ込んだら痛いんだぞこのやろー。
 草原に手を突いて「な、にす…っ」何すんだこのと見上げれば、バモが怖い目つきでこっちを見下ろしていた。いつもの無表情…じゃない。烈火のように瞳が燃えている、気がする。…っていうか怒ってる? 怒ってるのかこれは? なんで。俺バモが怒るようなこと言ったっけ。
『私達とて分別はある。その辺りの雑種のドラゴンとひとくくりにされてはたまらぬと思うように、お前もそやつと人間という言葉一つでくくられてはたまらぬだろう。それでいいのだ。余計なものまで背負い込むな』
 ……えっと、なんか怒られました。
 すっ転んであちこちについた砂やら草やらを払いつつ起き上がって、背中を殴られた勢いで転がっていた杖を拾った。
 なんかよく分からないけど、怒られたし。転ばされたし。バモってよく分からないな。
 俺達の様子を観察していたエレナタリティーが大きく翼を広げた。『まぁ、そういうことだ。人間という言葉で今回のことをひとくくりにするつもりはない。…お前達が片付けてしまったが、外の異変は続くだろう。何事も連携を取っていかねば……』バモより何倍も大きな翼をさらに大きく広げて、エレナタリティーの巨体が空に舞い上がった。
 行ってしまう。聞くこと。最後に聞くことは。
(異変はジューノ水晶回廊から…ガイシスタリティーのいるガイシスの巣は今のところ大丈夫…。さっきの言葉だとエレナタリティーはガイシスタリティーと情報共有してくれるみたいだし…。俺が目指すべきは、ジューノ水晶回廊、になるのか? そこにウェンダがいる確証はないけど、アンダワルドからの距離を考えると、その辺りに潜伏しててもおかしくはない、か)
 アンダワルドを離脱したウェンダはアーティシアに戻っていない。アンダワルドの港で見かけられたという情報もない。あいつはラーダスにいると踏むのが一番現実的で、ここまでの旅程で目撃情報がないことを考えれば、水晶回廊方面に逃走した、と見るのが妥当か。
『少年』
「、はい」
 少年、という言葉で呼ばれるのはこの場では俺だけだろう。
 考え込んでいて反応が少し遅れたものの、エレナタリティーの声に顔を上げると、巨体は遥か頭上、太陽を遮る位置で羽ばたいて俺のことを見下ろしていた。
『あまり思い詰めるでない。それでは守護竜になったフライドラゴンが報われぬだろう』
「守護竜…?」
 聞き慣れない言葉だった。それが何なのかもよく分からない。が、エレナタリティーはそれだけ言うとロングラ山の山並みの方へと羽ばたいて行ってしまったので、訊くに訊けない。
 バモが知ってるかも…と思ったけど、なんかあれだよ。ムスってしてる気がする。いつもの無表情になってるからよく分かんないけど、俺を怒ってから一言も喋ってないし。こっちにも訊くに訊けない。

 えーと。とりあえず、アライナスの巣を出ようか。一応情報は手に入ったわけだし、目的は果たせた。
 目指すべきは異変の中心地、水晶回廊だ。


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【 2015/08/27 (Thu) 】 落日のイデア | TB(-) | CM(0)

「落日のイデア」2ページめ




 ロングラ山の東側は、緩やかな山道が続いている緑のきれいな場所だった。
 ヘビータイプのドラゴンは地面の草をのんびりマイペースに食べて、茶色い体毛のネズミは毛繕いをしたりちょろちょろとその辺りを走り回っている。
 一見すれば平和そのものの山道だ。年月は感じるものの、石畳の道は充分平坦で歩きやすそうだし。
 この道をずっと行った先、どん詰まりになる場所に、エレナタリティーのいるアライナスの巣があるらしい。
「歩くよ」
『何故だ。飛んで行った方が早い』
「いや、体力つけなきゃだし…それに少し歩きたいんだ」
 アーティシアの門を軽く飛び越えたバモなら、このままエレナタリティーのいる場所までひとっ飛びもできたのだろうけど、それは遠慮した。歩くと言う俺にバモは首を捻っていたけど、大人しく俺を山道に降ろしてくれたので、荷物だけはそのままバモに預ける形で背中に杖を背負う。
 頭の中が慣れない術式でぐるぐるしてる。ちょっと運動でもして一度違うことに意識を向けないと。
 はりきって石畳を歩き始めた俺にバモはまだしばらく首を捻っていたけど、やがてのそりとした動きで後ろを歩き始めた。道が狭いから隣に並ぶと歩きにくいっていうのは言わなくても分かったらしい。
 山の方からアーティシアに向けて吹いてくる風は少し肌に冷たくて、山の風だなぁ、と思った。
 少し進むと、石畳の舗装された道はなくなって、ただの地面になった。舗装がなくなるのが早いと思ったら、道の脇でフライドラゴンと青っぽい毛色の鳥が喧嘩していた。鳥…うん、小さいけど翼っていうか羽っていうかがあるし、嘴もあるし。たぶん鳥。で、縄張り争いだろうか。どっちもそれなりに攻撃的に相手を突き回しているから、道の舗装が途切れている原因もこれだろう。
 なるべく避けていったとして、攻撃的なドラゴンと鳥の横を通るのは無謀かな…。やっぱりバモの背中で運んでもらった方がいいのかなぁ。歩くって言ってまだ5分なんだけど…。
 さてどうするかなぁと悩んでいると、喧嘩していた二匹が全く同じタイミングでこっちを見た。と思ったら、それまでの喧嘩の勢いはどこへやら、ドラゴンは翼をたたんで頭を低くして後退って、鳥の方は小さな羽をバタつかせながらどこかに走り去っていくではないか。
「お前ってさ、有名人…じゃないな、有名ドラ? なの?」
 振り返ればバモーカクがいて、いつもと変わらない無表情で俺か、俺の向こうで小さくなっているドラゴンを見ている。『知らぬ』「あいつ頭下げてるけど」『体格の大きな者に畏敬の念を抱いているだけだろう。弱肉強食の世界は至極単純なのだ』「ふーん…」まぁ、そういうことにしておこう。ドラゴンの世界での常識とかは俺は分からないし。
 攻撃されたら面倒だなと思ったけど、フライドラゴンも青い鳥もバモを畏れて近寄ってくることはなかったから、山道の坂というキツさを除けば順調に先へ進めた。
 水の音が聞こえる…。吹く風が冷たいとは思ってたけど、水場もあるのか。どおりで。
(山の水はきれいだって聞くけどどうなんだろう。おいしいのかな。少なくとも冷たいんだろうな。そこでちょっと休憩するか…)
 自分のモヤシさを痛感しつつ、なんとか急な上り坂を上がりきった。膝はまだ笑ってない。息はちょっと切れてるので整えていこう。深呼吸深呼吸。
 少し勾配の緩くなった道に、視界が開けてきた。どうやら少し広い場所に出たようだ。水の音も近い。
「水場があるよな。そこでちょっとだけ休憩しよう」
 音からしてあっち、と指さした俺にバモが首を捻る。『…疲れたのか?』ぼそっとした声には嫌味も何も含まれてないんだけど、なぜか嫌味に聞こえる…。このくらいで疲れたのか、的な。
 魔法使いとはいえもうちょっと体力をつけないとこの先マズいぞ俺。頑張れ。

 これから話をしに行くエレナタリティーっていうドラゴンは、バモの親戚のような存在らしい。希少種で、賢くて、体格も大きい。会話もできる。
 何をするにしても情報収集が必要だ。俺達はまずロングラ山周辺を治めているエレナタリティーが何か知らないか、話をするつもりでいる。
 エレナタリティーとバモに直接的な繋がりはない。ただ、エレナタリティーもバモも希少種で、賢いから、きっと話し合いができる、という前提での行動だ。無駄になる可能性もある。
 なぜ話のできる人間から情報収集を始めないのかといえば、理由がある。
 俺の立場上、人から有益な情報を聞き出すことはまず難しい。パイプ役のような知り合いなんていないし…議会もスカイハンマーも俺を疑心の目で見ている。アンダワルドに派遣した部隊は全滅、隊長のウェンダは失踪、任務で生き残ったのが俺のみとなれば、その疑心も仕方のないものではあるけど…。
 現状、ウェンダが『裏切った』という証拠は俺の証言とバモーカクの後押ししかない以上、俺がスカイハンマーから『追放』の処分だけですんでいるのは、まぁ軽い方だろう。
 そういうあれこれがあるから、議会、スカイハンマーからの情報提供なんて期待はできない。だからエレナタリティーを頼った。
 俺が純粋なオーセラ人だったら、きっと結果はまた違ったんだろうけど…生まれ持ってしまったものは変わらない。血は背負う。それだけのことだ。いつまでだってついて回る。そう、生きてる限りは。

 バモが後ろにいると当然のようにフライドラが頭を低くして場所を開けてくれたので、なんとなく申し訳なさを感じつつ、ドラゴンや動物が集まっている水場の近くに立って、俺は初めてそれに気がついた。
「…?」
 干からびた何かが地面に横たわっている。


道中1


(…フライドラゴンの、死体、か?)
 あまり水を汚したくはなかったものの、気になって近づいてみた。死体は日が当たって干からびている表面と水に浸ってぶくぶくになっている部分とに分かれ、近づけば明らかに死の臭いがした。生き物の水場であるこの場所にあることを考えると、衛生上このまま放置しておくのがいいこととは思えず、杖を構える。水に浸かってて燃えにくそうだけど、どうにかしよう。
 バモが一つ瞬きした。杖を構えた俺を首を捻って見下ろしている。
『何をする気だ』
「…処理だよ。理由はどうであれ、このまま放置しておくのは忍びないだろ。衛生上もよくないし」
『ふむ』
 頷いたバモが一歩下がった。『では私が燃やす』「えっ」慌てて振り返る。言うが早いか大きく息を吸い込んでいるバモに慌てて水を蹴ってその場を離れた。
 ごぅ、と背中側が熱くなる。同時に炎の色で水が一瞬で橙に染まった。その熱気と炎にほとんどの動物とドラゴンが驚いて逃げていく。
 熱い背中を払いながら振り返れば、死体があった場所には焦げた地面が残っているだけで、その地面もすぐに流れてきた水に覆われて見えなくなった。
『これでよいだろう』
 いつもどおりの無表情に、とりあえず頷く俺。…火力高いなぁバモは。いや、助かるんだけど、なんとなく肩身が狭い…。


 バモのおかげで? またはバモのせいで? すっかり誰もいなくなった水場でちょっと休憩して、再び山道に戻ってアライナスの巣を目指す。
 道なりに行って、かかっている橋を渡るところで足が止まった。
 見憶えのあるドラゴンがいる。ごつごつとした突起のある灰色のフライドラゴンがここにもいる。そう、ここにも。
 間違いない。ウェンダが連れていたのと同じ種類のフライドラゴンだ。
 たまたまここに同じ種類のフライドラゴンが一頭だけいる、なんて思えない。あまり考えたくはないけど…もう少しでアライナスの巣だ。そこにはエレナタリティーがいる。ナロールの巣のときと同じようなことが起こっていないとは言い切れない。
「バモ、乗せてくれ。急ごう」
『分かった』
 屈んだバモの背中に飛び乗り、アライナスの巣を目指した。灰色のフライドラゴンに気付かれないよう高度を上げて飛んでもらう。
 なるべくアライナスの巣へ早く行くためだったけど、高度を上げてもらったことで、俺はその現場を発見してしまった。フライドラゴンの死体と、戦うフライドラゴンとその子供、そして、灰色のあのドラゴンを。


道中2


 そうか。最初に見たあの死体はこのドラゴンのものだったのか。変色していて分からなかったけど…。
 小さなドラゴンが倒れている。必死に戦ったんだろうけど、大人の体格に子供が勝てるわけがない。残っているのは二匹…。手を貸さなければこのままなぶり殺されて死んでしまう。
「助けよう」
『何故だ』
「あの灰色のフライドラゴン、ウェンダが連れていたやつだ。たぶんだけど…自然発生したドラゴンじゃない。錬金術か何かで掛け合わされたやつだと思う」
 呪術について多少は身体が憶えたから、あの灰色のドラゴンが出す歪なオーラは前よりも肌に感じることができる。前は違和感、あるいは寒気として感じたそれは、呪いの力だったと、今なら分かる。
 バモがじっと灰色のドラゴンを見下ろした。視線を感じたのか、向こうが上空のこちらに気付いて翼を広げる。どこかぎこちない動きで。機械的に。一匹がそうすると残りのドラゴンもそれに習って空へ飛び立つ。
 結果的に子供のドラゴンが逃げる時間はできたけど…。囲まれたな。
『…確かに、奴らは空だな』
「空?」
『中身がない。哀れな生き人形だ。命令されるままに動いている』
「…つまり、命令している誰かがいるってことか」
『ああ』
「お前の言う生き人形が、現地のドラゴンを襲ってる。この点についてはどう思う?」
『疑問の余地もない』
 周囲を取り囲むフライドラゴンにバモが咆哮を上げた。耳がビリビリする。
 それでもフライドラゴン達は引かなかったので、バモが炎の玉と尾を叩きつける攻撃ですべて撃ち落とした。俺はバモから落ちないようにしがみつくくらいでとくに何もしないで、なんていうか、うん。肩身が狭い。
 フライドラゴンの子供は逃げてくれたようなので、ひとまず安心してそこを離れたら、また問題が発生した。アライナスの巣の周辺にはあの灰色のフライドラゴンが溢れていたのだ。現地の動物やドラゴンと争っている。
 よくよく目を凝らしたけど、この場に命令をしている誰か…ウェンダのような人物は見当たらなかった。
 灰色のフライドラゴンを放置しておくわけにはいかない。もともとここにあった生態系のバランスを崩しにかかっている以上、そして、あのドラゴン達の中身が『空』である以上…呪いを絶つ方法は一つだ。
 アライナスの巣の前に下り立ったバモを灰色のフライドラが気付いて襲いかかってくる中、バモの背中から飛び降りて杖を構える。
 魂のないその身体は、破壊するしか、虚ろな命が自由を得ることはない。
「掃討しよう」
 ポツリとこぼした俺に応えるバモの咆哮は地面や空気をビリビリと震わせた。
 俺の背中を護るように大きく広げられた翼が心強い。
 ……だけど、どうして、バモはここまで俺についてきて、俺のためになることをしてくれるのだろう。俺はいまだにその理由を確認できずにいる。
 ドシャッ、と音を立てて地面に落ちたフライドラゴンをバモの足が踏みつけ、すかさずその頭を炎で吹き飛ばした。最後の一匹だった。ほとんどバモが片付けてくれた。
「…、」
 相変わらず表情のない横顔に声をかけようか迷って、ぐっと拳を握って、やめた。
 今は時間が惜しい。外の様子のこともある。エレナタリティーに会って、話をしなくては。



【 2015/08/16 (Sun) 】 落日のイデア | TB(-) | CM(2)

「落日のイデア」登場人物紹介



 またもや突然始まっている「落日のイデア」ですが、「甘ったるいニルバーナ」から続く物語となっています
 今回初めてモレンドが出てくる話を読んだよ!って人は面倒くさいかもしれないですが左のカテゴリから「甘ったるいニルバーナ」をポチッと選んでもらって、ついでに目を通してもらえると…嬉しいです(›´ω`‹ )
 「落日のイデア」は一章めになります。ニルバーナはモレンドが旅立つまでの序章的な感じです
 イデアをどこまで進めるかは不明ですが…とりあえず物語の主軸があやふやしてるので、サブキャラとかで思い出しを兼ねてプレイしなくてはならないだろうな…w
 余談でした。さて、恒例の紹介をば。と言ってもニルバーナからメンバーはむしろ減ってるんですが…ちらっと登場したドラゴンとか文字だけでも載せるかな…?



モレンド

more2.png

 ナロールの巣の一件で父と相棒のスカイハマーゲイルを失ったが、現在はバモーカクを連れてラーダスを旅している。
 バモーカクのことはよく分からないというのが本当のところで、希少種で賢いドラゴンに名前をつけるのも…と思い、とりあえずバモーカクを縮めて『バモ』と呼んでいる。
 彼の現在の目標は、打倒・ウェンダである。


バモーカク

bamo1.png

 モレンドと共に旅する希少種のドラゴン。
 基本的に物事に無関心だが、善悪の判別と、それに対する嫌悪感などは持ち合わせているので、モレンドが遂げようとしていることには基本的に反対しないで従う。



 ちょこっと説明


 メロディ

 アンダワルドでモレンドの相棒だったスカイハマーゲイル。
 自我を喪ったナロールタリティーの重い一撃を受け、バモーカクの治療を受けるものの、小さな彼女にその一撃は重すぎた。アンダワルドに帰還後、ドラゴンポストの管理人が懸命に治療に励むも、回復の見込みなしと判断された。
 最期くらいは楽にという意向で薬剤を打たれ、安楽死する。
 死したドラゴンの魂はアノヤーテンへと導かれるが、メロディはそれを拒否。魂としてモレンドのそばで生き続けることを選び、彼を護る守護ドラゴンとなった。現在はモレンドが危機に瀕したときにだけその姿を現す。


 オーティス

 アノヤーテンを治めるドラゴンの代表格。ギガドラゴンの末裔で、人間のことを好ましいと思っている。
 聖地での仕事の一環としてメロディの魂に触れ、彼女の強い意志に共感して守護ドラゴン化に力を貸した。
 安寧と安らぎの終わりを予感し、世界の破綻を防ぐために外界へと向かったようだが…?




【 2015/07/21 (Tue) 】 落日のイデア | TB(-) | CM(0)

「落日のイデア」1ページめ



 ここ最近、アーティシアの外は何かと物騒だ。
 例を挙げると、盗賊団。前からポツポツと旅人や荷馬車を襲っていたけど、最近その頻度がぐっと増えた。一人は危険だからと街の外への外出には兵士や護衛の人と一緒でないと許可が下りなかったりして、個人的にはとても不便になった。ロングラ山の東側は私のいい散歩コースだったのに。さすがに散歩に兵士の人を付き合わせるわけにはいかないから、自然、散歩にはいかなくなった。
 次に、ドラゴンの凶暴化。専門家に言わせれば他に言い方があるそうだけど、一般人にも分かりやすく危険だよということを知らせるため、『ドラゴンが凶暴化しているから近づかないように』と言われている。つまるところ、これも、街から外に出るなと言っているわけだ。
 ある意味、気軽にアーティシアから出られなくなってしまった住人達。
 それでも、実力のある冒険者や、ちゃんと護衛を頼んだ商人、団体行動でやって来る旅人など、街を出入りする人達はいる。
 兵や中央のお偉いさんが発信する加減された情報とはまた別の、ちゃんと血の通った情報は、いつも外からやってくる。
 私の情報収集源はといえば主に冒険者だ。酒場はその最も代表的な場所。冒険者の人が仕事がないかと掲示板を眺めたり、ご飯を食べたり、一時の宿を取ったりする。人の出入りがあるということはそれだけ情報の出入りも盛んなのだ。アーティシアの外へ気軽に出ることができなくなってしまった私としては、酒場のバイトをしてでも、真新しいことが知りたかった。
 バイトをした結果は? そりゃあもちろん、言うまでもなく。大変だけど、とても充実している。
 最近のビッグニュースといえば、アーティシアにとってはお隣とも言える港町、アンダワルドから目と鼻の先であるナロールの巣が崩壊したというものだ。
 詳しい内容はわからないけど、冒険者のおじさん曰く、アンダワルドから見えていた洞窟が瓦礫の山に変わっていたらしい。あと、その影響か、浜辺の生物も見当たらないんだとか。浜辺の生物の焼き盛りフルコースを楽しみにしていたおじさんはたいそうがっかりしたと言っていた。
(………ナロールの巣…)
 私は仕入れた情報をもとに、小さな図書館でそのキーワードについて調べてみた。


『ナロールの巣は水中の洞穴で、暗黒の地下洞窟には主に滄竜科のドラゴンや両生類が生息する。また、洞穴の奥は巨大な地下湖となっており、ナロールの末裔が地底湖にいるとされている。

 普通の者なら【ナロールの末裔】に手出しをすることはないが、【ラーダスドラゴン学会】では、すでに絶滅したと思われた希少なドラゴンに関心を寄せている。
 オーセラ人がこのドラゴンを支配できれば、所属するギルドの名声を大幅に高めることができるだろう。』



 ナロールの巣自体が水中の洞窟、侵入も困難とあって、記述はそう多くはなかった。
 ふむ…。学会が重要視していたナロールの末裔がいた、かもしれない場所が、崩壊。これは、浜辺の生物の焼き盛りフルコースが食べられなかったとがっかりしているような場合じゃないだろう、おじさんよ。
 本をもとの場所に戻して、そろそろ仕事場に戻らなくては、と小さな図書館を出る。
 出たところで、私は初めてその人に気がついた。





 分厚い本をいくつも広げて、勉強中だろうか。
 最近人間観察が新たな趣味になりつつある私は、歩く速度をちょっと緩くして、じっと本に視線を落としている同年代くらいの子を観察した。
 冒険者の中には目立ちたがりで嘘八百を口にする人もいる。その人の情報が信用できるか否か、自分で見極めることも重要なのだ。まぁ、これも半分趣味なのだけど。
 彼が信用できる人かどうか? それは、喋ってみなければわからない。ああして勉強している姿は熱心な…うーん、兵士なのかなぁ。それにしては軽装だけど。
 頭の隅に引っかかりを覚えつつ、いいかげん時間だったので、せっせと階段を駆け下りて酒場の一番下の階へ。そこはちょっと薄暗いけれどもう通い慣れた場所で、エプロンをつけて調理場に入ればさっそく雑事を言い渡される。それもさくさくこなせるようになってきたのだから、私も頑張っている、と自己評価。

 閉鎖的になっている今のアーティシアがそれでも平穏なのは、主にギガドラゴンのおかげだろう。
 一般人は遠くからしかその姿を拝見することはできないけど、時々、外を歩いているととても大きな影に覆われることがある。雲ではなくてもっとはっきりした影。見上げれば、何を食べたらそんなに大きくなれるのだろうと思うような巨大なドラゴンの姿。だからみんな安心している。今の状況に不安や不満があっても、圧倒的な存在が、それ以上の安堵を与えてくれるから。
 私は兵士になる能力というか、才能というか、そういうものがからっきしだったから、兵士になってスカイハマーゲイルを相棒とするような未来は望めない。かといって、ドラゴンポストでドラゴンの世話ばかりするほどドラゴンが好き、というわけでもない。
 要するにないものねだりなんだろう。ああでもないこうでもないと自分に言い訳して、それで納得して、酒場のバイト店員で現状満足してしまっている。特別目標もなく、かといって大きな葛藤があるわけでもない、人からすれば、これは贅沢だ。
 だから私は特別不安は抱かない。不満、はちょっとはあるけれど、それもまぁ贅沢といえば贅沢なわけで。
 でも、そろそろ目標は持たないといけないだろうな、と思う。将来何になるとか、どういう仕事に就くとか…。うちは両親とも健在で共働き、子供は私一人。だから余裕があるけど、そうじゃない家庭があることだってわかるし。そろそろ真面目にならないとな…自分の人生に対して。


「宿泊希望のお客様よ。ご案内して」
 マスターに命じられて行儀よく「はい」と返事して、にこっと営業スマイルを貼りつけた私は、そのお客様を見て一瞬笑顔を忘れた。それも一秒のことで、すぐににこっと営業スマイルを浮かべて「こちらです」と宿泊スペースのある最上階に向けて階段を上がる。
 なぜ一瞬笑顔を忘れたのか? それは、そのお客様が昼間見かけた彼だったからだ。プラス、彼が連れている大きなドラゴンに驚いた。それでも一秒で笑顔を浮かべられるようになったのだから、私も慣れたものだ。
 とりあえず、会話だ。その人の一端でも知るにはコミュニケーションは必要不可欠。営業の一環でもあるし。
「宿泊って言っても、適当な敷物の上にごろ寝してもらう感じになっちゃうんですけど、大丈夫ですか?」
「平気です」
「あ、ちゃんと枕とお布団はあるので安心してくださいね」
「はい」
 苦笑いをこぼした横顔をちらりと見つつ、足元にも気をつけて階段を上がって、いい運動したな、と思う頃にやっと最上階に到着。
 ここが宿泊スペース。と言っても、最低限の料金で、酒場で泥酔した人がごろ寝するような場所だ。旅で疲れた身体を休めるような場所ではない。寝れればそれでいいって人には穴場なのかもしれないけど、私は無理だなぁ。
 なんて思いつつ、空いてるスペースにお客様である彼と、彼の連れているドラゴンをご案内。


宿2


「このスペースを好きに使ってもらって大丈夫です。お布団とか、足りないものがあったら言ってください」
「分かりました」
 では、と頭を下げてそろりとその場をあとに…したふりをして、さっと柱の影に身を隠す。他のお客様の手前、積んである備品にいかにも用があるような素振りをしつつ、柱の向こう側に耳をすませる。
「バモ、布団いる?」
『いらぬ』
 おお、喋った。彼の連れはあのドラゴンだけだから、この声はドラゴンのものだろう。人と会話ができるってことは、かなり賢いドラゴンである証だ。
 大きないびきをかいて寝こけているおじさんを横目に、そろりと柱から顔を覗かせてみる。荷物や杖を横に置いた彼は、ちょいちょいと手招きしてドラゴンを呼んだ。ドラゴンはその呼びかけに首を捻っていたけど、やがてのそりのそりとした動きで手招きする彼のもとへ歩き寄る。『なんだ』「今日は疲れた。もう寝よう」『…慣れないことをするからだ。呪術の知識などそう簡単に頭に入らぬぞ』「うっさいなぁ。父さんが遺していったものなんだ。…これから必要になるかもしれない。憶えておくに越したことない」ふん、と鼻を鳴らしたドラゴンは仕方なさそうにその場に寝そべった。上手に、彼を中心に丸くなるような感じに。
 ああいう光景を見ると、ドラゴンっていいなぁ、と思う。でも、じゃあそのためだけにドラゴンを飼うようなことができるかと言われれば、難しいかなぁ、と思う。うん、ないものねだりだ。
 丸くなったドラゴンのお腹に背中を預けて、頭を翼に埋もれさせて、彼はすでに眠そうだった。昼間から夜のこの時間まで勉強していたというのならそりゃあそうだろう。
「バモ…」
『なんだ』
「明日は、エレナタリティーに会うんだろ?」
『そうだ。ここから一番近く、話のできるドラゴンだと聞いている。ラーダスの異変についても何かしら知っていることはあるだろう』
「そうか……」
『……モレンド?』
「……………」
 ドラゴンのふかふかの翼に頭を埋もれさせたまま、彼は眠ってしまったらしい。
 まったく、と言いたそうに吐息したドラゴンは前脚で器用にたたんだままの布団を引き寄せ、尻尾も使ってこれも器用に布団を広げて、眠ってしまったらしい彼にかぶせていた。
 そっと柱の陰に顔を引っ込めた私は、ドラゴンっていいなぁ、と思った。思いながら、今頃出て行く理由として空箱をいくつか重ねて持ち上げ、これを下に持っていく準備をしていたから今ここを出て行くのよ、という顔をしてそっと最上階から階段を下った。
 途中で足を止めて見上げてみる。大きなドラゴンの翼が手すりからはみ出て見える。
(エレナタリティー…)
 また調べ物ができてしまった。明日の休憩時間も図書館かな、これは。
 それに、ラーダスの異変、とあのドラゴンは口にした。ということは、アーティシアの周りだけじゃないんだ。アンダワルドだって変わった。それならこの先、要塞のある方面はもっと変わっているのかもしれない。
 アーティシアは閉ざされた平穏の中にあるんだ。本当に。
 適当な場所に空箱を置いて、まだ営業中のバーにそそくさと戻る。トレイ片手に空になった器や酒瓶を回収しながら、よし、と一人決意を固める。
 店員としてじゃなく、一人の人間として、話しかけてみよう。彼に。ドラゴンは彼のことをモレンドと呼んでいたっけ。
 私は彼に興味がわいた。ほら、さっきも呪術? とか言ってたし。それって魔法職ってことなんだろうけど、そういうのにも興味あるし。今までどんな旅をしてきたのだとか、これからどこへ行くのだとか、訊いてみたいことがたくさんある。
 その日の仕事を終えて、意気揚々と家に帰った私は、翌日、早めに酒場を訪れた。
 けれど、彼はもういなかった。ついさっき出て行ったところだ、と彼を目撃した人には言われた。彼が目立つというより彼が連れているドラゴンが目立つから、その情報は信頼できるだろう。
「なんだ…もう行っちゃったのかぁ」
 訊いてみたいこと、たくさんあったのに。残念だ。
 彼を乗せた大きなドラゴンは、青い空の中に飛び立って行った。行き先は…そうだ、行き先は、エレナタリティーが何かを調べればわかるかもしれない。まぁ、行き先がわかったところで追いかけることはできないから、私は仕事をしながらアーティシアで運良く彼と再会することを願うしかない。


 けれど、その後、私が彼と再会することはなかった。
 かわりに、ロングラ山の東側の『凶暴化したドラゴン』の数が減少した。議会と学会によれば、『エレナタリティー』がドラゴン達に働きかけてくれたとのこと。
 そのエレナタリティーに働きかけたのはきっとモレンドと、バモと呼ばれていたあのドラゴンなのだけど、その情報はどこにも記されていなかった。操作された情報…。山への立ち入り制限が解除されて、これで好きに散歩ができると喜ぶどころか、私は今憤りを感じている。
 議会も学会も何かを隠している。少なくとも、これは真実の一つが記されていない。
 私はポストに放り込まれていたその紙片を机の上に放り捨てて、溜息を吐いた。
 …だからって、私にできることはないわけだ。モレンドとバモが陰ながら働きかけた、そのことをただ知っているだけ。
 だから、せめて、祈っておこう。もうアーティシアには戻らないかもしれない一人と一匹の無事な旅路を。


【 2015/07/14 (Tue) 】 落日のイデア | TB(-) | CM(0)
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