ゲームな日記

君にやっと巡り逢えた
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砕けた記憶より




 夜。その日の月はどこか青白かった。
 モレンドが寝静まったのを窓ガラス越しに確かめた私は、自分もそろそろ眠らねばなるまい、と他人事のように考えた。
 明日、アンダワルドに駐在するスカイハンマーの部隊は調査という名目でナロールの巣へ赴く。モレンドもそれについていくと決めた。逃げてもよい場面で、選択肢のある場面で、奴は逃げないと決めた。戦うと決めた。ならば、私はついていくだけだ。
 自分で決めたこととはいえ、明日の出撃に緊張していたのだろう。やっと眠ったモレンドを窓越しにしばし眺める。
 青白い月が、明日を憂いている。…そんな気がする。
 私も疲れているのかもしれない。さっさと眠って、明日に備えよう。そう思い翼を広げたとき、家から出てくる人影を見つけた。片腕のないシルエットはそうそう見間違えることはない。モレンドの父親、サークス人だからというただそれだけの理由で疎まれている、トラスだ。
 トラスが向かったのはいつもの場所。そう、モレンドの母親、トラスにとっては最愛だった人の眠る丘だ。
 私はなんとなく、トラスを追うように空を飛び、ついていった。
 トラスの背中から、雰囲気から感じる、死の気配。魂の希薄さ。青白い月が病的なまでに白く照らし出すその姿は、今にも折れそうな花に似ていた。

「メロディ。お願いがあるんだ」

 私がついてきていることなどとうの昔に気付いていたようで、当たり前のように声をかけられ、私はカチン、と歯を合わせて返事をした。
 トラスは冷たい墓石を愛おしげに撫でた。何度も、何度も、ゆっくりと。そうして最愛の者の頭を撫でるように。

「私に何かあっても、モレンドを優先しろ」

 まだ人の言葉で意思を伝えることのできない私は首を捻った。なぜ、と。なぜそんなことを言うのか、という意味で。
 トラスは明日の出撃に何かを予感しているのだろうか。上手くいけばいい、上手く終わればいいと皆が願っているそこに、絶望があると、予感しているのだろうか。だが、なぜ。
 青白い光に照らされて夜の中にぼんやりと浮かぶトラスの顔は、死人じみていた。サークス人という人種はあまり血色がよくないという特徴があるが、それが際立ちすぎて、まるで死人のような顔色になっている。その顔で笑われると、私は何も言えなかった。
 私が首を捻ったことにトラスが気付かなかったことはないだろうが、奴は何も言わなかった。ただ曖昧に微笑んで墓石を撫で続けている。その手が冷たい墓石と同じ温度になろうと構わない。
 私の方が先に折れて、こくり、と頷いた。それでトラスは満足そうに頷いて返した。そして、青白い月を見上げる。

「夢を見てね。フェンが私に会いに来た。なんだかとても悲しそうな顔をしていたんだ。…だがどこか嬉しそうでもあった」

 フェン、というのはモレンドの母であり、トラスの愛した女の名だ。
 彼女の魂を感じた、とトラスは言う。きっと私を迎えに来たのだろうね、とも。何を弱気になっているのかと私が翼をばたつかせたところで気にも留めない。トラスの意識は、魂は、すでにこの世界を離れかけていた。愛しい者の導きに、安堵したような顔さえして。


 ……私に何が言えるだろうか? 人の言葉など話せない、意思を伝える術のない私に、何が。
 支えてくれる者が、愛している者がいなくなり、トラスが辛くなかったはずはない。そんなことは分かっている。分かっているとも。愛しい者が迎えに来た。そちらにいく。その選択がトラスにとってのささやかな幸福なのだろうことも。
(だが、モレンドはどうなる)
 もう泣き喚くような子供ではなくなったかもしれないが、奴にだって支えはいる。両親。自分を肯定してくれていた片方を失い、もう片方まで失えば、奴は何を土台に立っていく。何を支えに進んでいく。何を信じて生きていく?



(ああ、この記憶も、壊れる)
 壊れてしまう記憶は、魂は、壊れたくないとばかりに最後の声を上げる。その記録を叫び、パリン、と音を立てて砕けさせ、散っていく。
 私の魂はそうして少しずつ小さくなっていく。
 だが、それでいいんだ。モレンド。それが私の選んだ道だ。肉体がなくともお前を護る術を知った私が自分で選んだ道だ。なくしてしまうには惜しい記憶ばかりだが、お前を護るためだ、仕方がない。
 モレンドを襲った破壊の一撃で、私の記憶はまた一つ散った。
 モレンドが私を気にするようにこちらを振り返る。だが、もう私のことは見えていない。私は奴が危機に晒されたその瞬間に具現化するだけの存在だ。痛みも感じない。ただ、お前が無事でよかったと、安堵するだけ。
「よそ見するなよ」
 モレンドが無事だと知って息を吐いた東方の侍は敵陣を切り刻みに、連れのドラゴンと共に飛び込んでいった。
 モレンドはといえば、後方から魔法を唱えている。破壊の一撃には破壊の一撃を。目には目を。歯に歯を。
 モレンドは今戦っている。悪の勢力と。この世界を脅かす勢力と。
 孤立していたモレンドだが、旅を続けているうちに、仲間が少しずつ増えてきた。私はそのことを嬉しく思う。
「バモ」
『承知』
 バモーカクの力を借りて空いっぱいに広がる魔法陣をぼんやりとした心地で見上げる。「シロ」『なぁに?』「前から来る。守ってくれ」『うん、わかった!』シロと呼ばれた黒い竜は自分の力を嫌っているが、求められれば応え、腐蝕の力を操り、モレンドを護る。
 …私は少しずつ曖昧になっていく。
 私が私を忘れていく。私を構成する魂の量が減っているのだ。当たり前といえば当たり前の行程だ。
 私が私でいられるのはあとどのくらいだろうか。私がモレンドを護ってやれるのはあとどのくらいの時間だろうか。最近の奴は危険なことばかりに直面し、私が護る回数も増えている。世界が破滅に向かっているのだ、それを止めようと動けば当然のことなのだが…できることなら人目につかぬ場所でひっそりと暮らし、平穏の中にあってほしかった。そんなことを思ってしまうのは贅沢だろうか。
 私を守護竜とするのに力を貸した者が、今は小さな人の姿で手をかざす。「僕もやろう」「え? でも、干渉はしないって…」「もうそういう段階は過ぎてしまったよ。世界の危機だ。僕だって手を貸すさ」空に描かれる魔法陣がより巨大で神々しいものに変わっていく。私をそれをぼんやりと見上げる。

 オラディア。人とドラゴンが共存する地。
 その均衡はもはや崩れかかっているが、それでもなんとかしようと、なんとかできるはずだと、モレンドは踏ん張っている。

 私は見ている。視ている。
 魔法陣から現れた巨大な竜。竜の形をした聖なる裁きが、悪を滅する瞬間を、ぼんやりと。眩しい光が世界を貫き、音さえ掻き消すその間も、じっと、その瞬間を視ている。

 

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【 2016/01/07 (Thu) 】 お話 | TB(-) | CM(0)
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Author:モレンド
モレンドです!
画像はちょろさんが描いてくれたものをちょっと加工しました!w

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