ゲームな日記

君にやっと巡り逢えた
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エンドロールなど流させない 五篇




 かくして、騎士王の冠までいただいた一人の騎士は死んだ。
 その死は亡骸を伴わず、多くの人々は騎士王の死を嘆き悲しんだが、実感はできていないようだった。
 騎士王の死を知っているのは、騎士王に死を運んだそのドラゴンのみだった。
 ルダールガーディアンと呼ばれたそのドラゴンは、騎士王亡き後も彼が愛し護ろうとした国と人々を護った。命を懸けて、誇りを懸けて。騎士王が生きていればこうするであろうという考えのもと、オラディア全土を包む恐怖と暴力の嵐と戦った。
 しかし、世界を包んだ戦火は騎士王の愛した国にも届き、ついには街は焼き払われ、人々は逃げ惑い、バラバラとなった。
 炎に包まれ、腐臭が蔓延り、止むことのない脅威に曝される、かつては愛に溢れていた街。
 ドラゴンは悲しかったが、それ以上に悔しくて、愛していた街に留まり続けた。騎士王と共に過ごした場所を護り続けた。思い出の地を、生きた場所を、護り続けた。
 もうそこに人がいなくとも、国がなくとも、街が廃墟と化そうとも、気付かぬ間に戦争に終止符が打たれ、空が晴れようとも、その地を飛び立つことはなかった。
 分厚い雲が取り払われた青い空に、太陽の光が眩しかったことを思い出しても、ドラゴンはその地で翼をたたんで飛び立つことはなかった。
 ルダールガーディアンは、その名の通り、朽ち果てるまで、ルダールのことを護ると決めたのだ。そこに彼の肉体や魂がなくとも、もう消えかけた思い出の地であろうとも、護ると決めたのだ。
 一途で頑固なその想いを哀れと思ったのか、瓦礫しかなかった廃墟にはほんの少しの緑が芽生えるようになった。
 もう家の形など保っていないただの瓦礫の柱を背に、じっと動かないドラゴンの足元に、花が咲く。瞑想するように目を閉じているドラゴンは花になど気付かない。それを美しいと思う心もあまりない。ドラゴンにとって美しかった世界はとうの昔に死んでしまったのだ。騎士王ルダールが喪われたとき、彼によって得たその心もまた喪ったのだ。


 月日がたち、ドラゴンを中心として草木が茂るようになり、廃墟が鬱蒼とした緑に包まれる頃。
 半ば彫像のように動かずにただ息をしていたドラゴン。思い出に浸り、騎士王のことを忘れまいとするドラゴン。
 あまりに動かずにいたため、ドラゴンの身体は蔦や咲いた花に覆われていた。
 まるで生き彫像だったドラゴンが、パチリと目を開ける。珍しく。そうして億劫そうな動きで顔を上げ、すっかり森となっているかつての街に視線を投げる。
 ドラゴンは感じていた。懐かしいものを。魂の呼吸を。近づいてくるものを。
 半ば彫像として、ただ息をし、存在しているだけのドラゴン。そのドラゴンの前に茂みをかき分けてやってきたのは一人の少年だった。腰には剣。顔立ちはまだ幼いが、ドラゴンには見憶えのある金髪碧眼の色をしていた。
「やっと見つけた。随分と遠かったよ、ここは」
 少年が笑うと、彫像のように凍りついて動かなくなっていたドラゴンの心が一つ脈打つ。憶えがあったからだ。その笑い方に。
 少年がドラゴンへと手を差し伸べる。緑の葉の間からキラキラとした木漏れ日が差し込み、少年の瞳と髪を虹色に彩った。

「信じてる」

 その言葉は、かつてドラゴンを救った言葉だった。

「愛してる」

 その言葉は、ドラゴンが騎士王の最期に吐露した言葉だった。
 ドラゴンは動けない。そんな馬鹿な、という思い故に動けない。一歩も動くことをしていなかった身体のせいもあり、ドラゴンは動けないまま、そばにやってきた少年の腕に頭を抱かれた。まだ短い腕だったが、ドラゴンは思い出していた。最初にこうされたあの日の夜を。
 動きにくそうな白い甲冑。星の光が宿った色。鎧とは似合わない笑顔を浮かべたかつての騎士王が掌を差し伸べる姿。その向こうから射す月光の金色。美しかった世界。
 やがて訪れた朝に、騎士王は言った。そして、目の前の少年もまた、あのときと同じ満面の笑みを浮かべて言うのだ。

「行こう」

 ……その言葉。この奇跡を。ドラゴンはずっと待っていた。かつて彼が暮らした地に留まり続け、思い出に浸りながら、可能性の低い奇跡をずっとずっと願っていた。
 あまりに動いていなかったせいで身体に蔓延っている蔦を引きちぎり、少年の頭に頬をこすりつけて、ドラゴンは鳴いた。泣いた。もう喋り方など忘れてしまっていたが、それでも問題なかった。
 少年は少し困った顔でドラゴンの頭を撫でている。そう、彼はドラゴンのことを理解していた。物心つき、魂の記憶を思い出したそのときから。ずっとずっと前から。
 一人と一匹が並んで歩いて行く。かつての思い出の地、現在の廃墟の森を後にして、青い空の下へと歩いて行く。


 森が途切れたところでドラゴンは大きく翼を広げた。風の掴み方を忘れている。少年はリハビリに励むドラゴンに楽しそうに跨って、もういいから行こうと空を指す。軋む翼が不安だったが、ドラゴンは言われるままに地を蹴った。長く留まっていた地をついに離れた。不安定ではあるがなんとか飛んでいるドラゴンに、背にいる少年は笑っている。
「ずっと待ってたんだな。ありがとう」
 そう言って頭を撫でる少年に、ドラゴンは黙っている。だが、どことなく嬉しそうなのは尾の揺れ方が示している。
 ルダールガーディアン。そう呼ばれたドラゴンの心はまだ息を吹き返したばかりだが、その口元は歪むような形で不器用に笑っていた。
 ドラゴンがかつての自分やその心、言葉を思い出す日は、きっと近いだろう…。



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【 2015/10/02 (Fri) 】 お話 | TB(-) | CM(0)
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