ゲームな日記

君にやっと巡り逢えた
071234567891011121314151617181920212223242526272829303109

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
【 --/--/-- (--) 】 スポンサー広告 | TB(-) | CM(-)

エンドロールなど流させない 一篇




 大丈夫だよ。信じてる、愛してる。そんな砂糖のような言葉を素面で吐く人だった。
 いや、素面どころじゃない。それよりもっとひどい。当然の如く笑顔でそんな言葉を吐くのだ。しかもそこには嘘や偽りが一片も存在しない。こう言ってはなんだが、聖者という生き物がいたとしたら、それはあの者のことだと思う。
 満面の笑みで牙を剥く私の頭を抱き締め、この爪が、この牙が、自分を傷つけるかもしれないということなど欠片も心配していないと…もし私が牙を剥いたとしても、その痛みすら受け入れる、という笑顔。
 そのときの私は酷く傷を負っていた。心にも、身体にも。
 珍しいドラゴンだからと人間に追い回され、追いかけられ、ようやく逃げ込んだ洞窟で静かに暮らすことを心に決めた、空が緑のカーテンを薄く帯びていたあの夜。
 今でも憶えている。ああ、よく憶えているとも。
 動きにくそうな白い甲冑。星の光が宿った色。鎧とは似合わない笑顔を浮かべた男が一人、私が寝床と決めた洞窟の入り口からこちらに向けて掌を差し伸べる姿。その向こうから射す月光の金色。
 まるでこの世界に祝福されたかのような男と、洞窟という光の届かない闇の世界にいる私。よくできた絵のような対比図。
 光の世界から、闇の中へ、躊躇うことなく踏み出された足と、伸ばされた手。星の光をうつしてきれいだった甲冑は闇に沈み、色をなくす。
 唸り声を上げて警戒する私に相手はこう言った。

「大丈夫だよ」

 一体何が大丈夫だというのか。相手はそう言い、私に手を伸ばし…私は伸ばされた手の無防備なことに一瞬躊躇った。甲冑などこの牙で貫くことは容易い。本気になれば、その腕をひきちぎることもできる。
 私が迷ったその間に、相手は私の頭を抱き込んだ。決して小さな頭ではない。甲冑と私の鱗がぶつかってなんともいえない音を立てる。

「信じてる」
(何を)
「愛してる」
(…何を)

 男はその言葉を繰り返した。夜が明けるまでずっと私の頭を抱いたまま、砂糖のような言葉を吐き続けた。飽くことなく、ペースを乱すこともなく、当然のことのように愛を紡ぎ、私に大丈夫だと言って聞かせる。
 珍しいドラゴンだと。指さされ、追いかけられ、捕まえろと追い立てられ。ようやく逃げ込んだ静かな場所。ここで傷ついた心身を癒し、心穏やかに生きられれば…それが私の生なのかもしれないと、そう思っていた。
 朝が来て、男が気づいたように顔を上げる。そして私の頭を撫でる。顔には満面の笑み。

「行こう」

 …男の後ろから朝陽が射している。私を撫でるその手が正解だと言うように。
 男が先に洞窟の入り口に立って伸びをする。その無防備な背中に爪の一撃を被せることはもちろん簡単だ。だが、そんなことをしたところで何になろう。私が抱いたほんの少しの憎しみや苦しみを、この男は受け止めるだろう。当たり前の顔をして、大丈夫だと言って。



 騎士ルダールは仕える王からも信頼される男だった。それだけの実力があるというよりは、人間性。それが求められていたように思う。
 街のどこへ行ってもルダールは人気者であった。花輪をくれる女、握手を求める子供、声援を送る男、頭を下げる老婆…。
 迫った暗黒にも勇敢に立ち向かう。我が身よりも民のことを思い剣を抜く。それで大型の魔物に引き気味だった騎士団の心は一つにまとまる。ルダールと、私、一人と一匹が戦場を切り開くのに続く。
 私は人間が好きではない。どちらかというと嫌いであったといえる。
 だが、ルダールがすべてを変えてしまった。
 騎士という生き物の鑑のように生きる男に、私は心を打たれたのだろうか。分からない。だが、好ましいと感じたことは確かであろう。
 その生き方は美しかった。空一面の朝陽のように眩かった。目を閉じてしまいそうなほどに輝いていた。
 だが、その背を護る者がいないということだけが気になった。
 だから私は、ルダールの背中を護ることにした。

 ルダールの斜め後ろ辺りをついていくようになって、一年目。
 最初は物珍しそうに、私というドラゴンを眺めていた民や騎士だったが、やがて私という存在に慣れ、私をルダールのドラゴンだと認識するようになった。

 ルダールの隣を歩くようになって、二年目。
 出撃のさいは地上を走る馬型のドラゴンではなく、ルダールは私の背に乗るようになった。なぜか? 私がそれを許したからだ。何より、空を行けた方が何事もやりやすかろう。偵察も、特攻も。
 そうしてルダールと出撃するようになった私についた名は、『ルダールガーディアン』
 そのまますぎてなんとも面白みに欠ける呼び名だ。

 ルダールと生きるようになって、五年目。
 騎士ルダールは、その功績から『騎士王』の名をいただいた。騎士王ルダール…ふむ、なんとも偉そうだが、騎士の中であやつがその辺りの上位に位置していることは認めよう。ルダール以外に騎士王と呼べる人間がいるとは思えない。
 騎士王。その名が新しく刻まれた白い鎧は、以前よりもずっと精巧に、芸術品のように、奴を彩る。
 ルダールの輝きが増す。そのうち奴の彫像でも作ろうという話になるまでに。
 街が、国が、ルダールという人間を信じ、愛していた。
 私はこの場所が美しいと思った。規律を護りルダールに従う騎士団。ルダールと騎士団に守られ安全に生き、それに感謝し、笑う人々。苦しむ民のためにと進言すれば、ルダールの言葉を受け入れ政策を打ち出す王。
 ルダールが護り慈しんだ人は、いずれルダールに近い場所を目指す。善が善を呼ぶのだ。そうしてこの国はもっとよくなっていくだろう。
 騎士王ルダール。その名は永遠に世界の中に留まるだろう。お前の生き方を見て育ち、お前を目指した者は、お前を忘れないだろう。そして、お前の生き方を目指した者は、その生き方を受け継ぎ、次の世代の子供がまた思うのだ。お前のような生き方を、と。
 善の流転。
 これほどに美しく、完成されたものは、世界の果てまで探したところで見つかりはしない。



「俺はね、別に偉い生き方をしているつもりはないんだよ。これが普通だと思っている」
 夜の見回りの仕事を引き受けたルダールは、私の背でなんだかなと困った顔をしながらそうぼやいた。その顔は未だに騎士王という冠をいただいたことに戸惑っているようだった。「愛しいものは護りたいと思うし、それを脅かすものは許さない。そのために全力を尽くす。…何かおかしいか?」私が口角を引きつらせて笑っていることに気づいたらしく、不満気な顔をされた。
 ああ、全く、相変わらずの聖者だ。人間にしておくには惜しいほどに。ギガドラゴンにでも生まれついていれば、私は末永くお前に仕えていたろうに。
 だがお前は人間だった。人間だったのだ。一国の騎士だったのだ。その国を護るために生き、民のために剣を振るう。その肩に世界は重すぎる。
『ギガドラゴンにでも生まれついていれば、世界はもっと善くなっていっただろう』
 私の言葉に、ルダールはなんとも言えない顔で肩を竦めた。それこそ言ったところでもうどうにもならないことなのだが…もしもルダールの魂が流転するならば、次はギガドラゴンに生まれつくように、と願わずにはいられない。そんなことはとうてい無理だと頭では分かっているのだが…。
「ルダールガーディアン、なんて呼ばれてるが、お前はそれでいいのか?」
 随分今更なことを気づいたような顔で言われ、私は口を閉じた。
 面白みも何もない呼び名だが…その通りの生き方をしていることも否めない。
 何も言わない私にルダールは肩を竦めた。ガチャ、と鎧の音がする。騎士王の冠を刻まれた白い鎧は、いつかの夜のように星の色を宿し、輝いていた。
 ぽん、と私の首辺りをルダールの手が叩いた。ぽん、ぽん、と子供をあやすような仕種だったが、眼差しからは愛を感じた。
「もし俺が、死んでも。人間を嫌いにならないでやってくれないか」
『……何を言っている』
「お前の目から見たら、俺は善いことだけをしている人間に見えるかもしれない。それこそ善人みたいな…。だけど、この世界には、それが都合が悪い人間もいるんだ。この国にもな」
『そんな人間に、お前が殺されるくらいなら、私がその人間を殺す』
 唸り声を上げた私に、ルダールは至極困った顔で笑った。


スポンサーサイト
【 2015/09/03 (Thu) 】 お話 | TB(-) | CM(2)
ドキドキしながら読ませていただきました!
リクエストに早速答えていただきありがとうございました・・・!
騎士王ルダールが眩しすぎて直視できないほどですww
だけどそれぐらいじゃないと、バトルドラゴンって頑固そうだからついていかない気もしますねw

年を重ねていく文に思わずうるっと来ちゃいました、二遍も楽しみにしてます!
【 2015/09/03 】 [ 編集 ]
ありがとうですよ!

 一番最初にピンときたのがこんな聖人ルダールでした…wイケメン!(

 続きの二篇が半分くらい書けているので、早めにうpできるよう頑張ります!ご褒美はヘルカさんの絵じゃ!←
【 2015/09/04 】 [ 編集 ]
コメントの投稿












管理者にだけ表示を許可する
プロフィール

モレンド

Author:モレンド
モレンドです!
画像はちょろさんが描いてくれたものをちょっと加工しました!w

オラディアを舞台にした小説などを載せています。
よかったら読んでいってね~

Twitter
カウンター


上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。